マンション売却の手続きの流れ、行政手続きもわかりやすく解説

マンションを売却する際には、不動産会社に売却活動を依頼をしたり、購入者が決まれば売買契約・物件の引き渡しなど様々な手続きを行うことになります。
初めて不動産を売却する際には、何から手を付けていけばいいのか、売却活動・手続きがどういう順序で進んでいくのか、自分は何をしたらいいんだろう、と分からないことも多いと思います。
そこでマンションを売却する際の、手続きの流れについてわかりやすくご説明します。大きく分けると次のようなステップがあります。

1.売却条件・資金計画の整理
2.価格査定
3.媒介契約の締結
4.売却活動
5.重要事項説明
6.売買契約の締結
7.残金決済・引き渡し
8. 行政手続き(税務申告)

1.売却条件・資金計画の整理

マンションを売却しようと決めたら、まず方針を決めましょう。売却の理由により異なります。急いでいるなら値段を少し下げてでも早く売る、ゆっくり待って高値で売りたい、などを不動産屋に行く前に決めておきましょう。
また売却物件に住宅ローンが組まれている場合、売却代金でローンを返済し「抵当権の抹消」を行う必要があります。そのため現在のローン残債を銀行で確認し、売却代金でまかなうためにどれくらいの価格で売る必要があるかを、検討しましょう。また売却には不動産会社に支払う仲介手数料など、諸費用がかかります。そういった費用をすべて考慮して、最低希望売却価格を決めましょう。

2.価格査定

複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。査定には机上査定と訪問査定があります。
机上査定は不動産会社の担当者が実際に物件を見ずに、過去のデータを基に算出されます。物件の地域、築何年経っているか、広さ・間取りなどを参考にします。机上査定は「簡易査定」とも言われ、全国の不動産会社共有のデータベースを基に計算をします。そのため複数の会社に依頼しても、同じ情報を使用していますので各社でそんなに価格の差が出にくいと言われています。
インターネットで査定依頼ができますので、おおよその参考になる価格がわかります。

一方訪問査定は不動産会社の担当者が実際に訪問し、物件の状況などを直接確認します。査定のポイントは机上査定のデータに加え、物件内はもちろんのこと近隣の環境なども判断材料になります。最寄り駅までの距離や道のり、閑静な住宅街か、近くに公園や学校はあるか、スーパーなど買い物に便利な場所か、といったことも対象となります。
訪問査定のメリットは、実際に物件を見て査定額が算出されるため、より相場に近い額が示される点です。ただし不動産会社により過去の取引データの量に差がありますので、各社で大きく異なる額が提示されることも多いです。
その他のメリットは売り主の側から、不動産会社や担当者の力量をはかることができる点です。きちんと対応してくれるか、根拠を持った査定ができるか、などを比べることができます。査定は売却価格を決める上で非常に重要ですが、同時に売り主の方で不動産会社を選ぶための良い機会となります。

3.媒介契約の締結

仲介をしてもらう不動産会社が決まったら、媒介契約を結びます。媒介契約には次の3種類があります。
(1)一般媒介契約
(2)専任媒介契約
(3)専属専任媒介契約

(1)一般媒介契約

一般媒介契約の大きな特徴は同時に複数の不動産会社と契約を結べることです。また他の2つの契約と違い、契約期限は定められていません(行政指導による取り決めはあります)。

一般媒介契約には「明示型」と「非明示型」があり、前者の場合は他にどの不動産会社と契約を結んでいるか、売り主は他の会社名をそれぞれの会社に伝える必要があります。非明示型の場合はその義務はありません。
一般媒介契約のメリットは複数の会社に依頼できるため、より多くの購入希望者に物件情報を見てもらえることです。また売り主に対して規制が少なく、不動産会社を通さずに自分で購入希望者を見つけて契約を結ぶことができます。

主なデメリットとしては、次の2点があります。
・不動産会社から売り主に対し、売却活動の状況を報告する義務がない
・全国の不動産会社の情報データシステム(レインズ*)に物件を登録する義務がない

また不動産会社にとって一般媒介契約は、売り主が自社のみと契約しているわけではないため、あまり条件の良い契約ではありません。そのため専属契約と比べると対応が希薄になりがちで、購入希望者が見つかるまで時間がかかる恐れがあります。
一般媒介契約は時間がかかっても広く情報を行きわたらせて、高価格で売却をしたい場合に適しています。

*レインズ…不動産流通機構が運営をする「Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」というサイトの頭文字を取ったもので、一般的に「レインズ」を呼ばれます。
不動産会社がそれぞれ持っている不動産情報をまとめたもので、全国どこからでも一括して物件の検索ができるネットワークシステムです。使用できるのは会員登録をした不動産会社のみで、一般の人は使用できません。
不動産流通機構は国土交通省からの指定を受けており、東日本や近畿圏など、全国に4つの法人があります。

(2)専任媒介契約

専任媒介契約を締結すると、売り主はその他の不動産会社とは媒介契約を結ぶことができません。契約した1社に任せることになります。ただし売り主が自分で親戚・知人などから購入者を見つけて契約することは可能です。
この契約の特徴として、不動産会社は契約後7日以内にレインズに物件を登録する義務があります。また2週間に1度以上、売り主に対して売却活動の状況を文書・メール・口頭で報告するよう規定されています。
契約の有効期限は3か月とされており、期限が来たら売り主は再度同じ会社と契約することもできますし、他の会社に変更をすることもできます。
不動産会社にとっては一般媒介契約の場合よりも、自社が仲介をして売買契約に結びつく可能性が高いですので、より熱心に販売活動を行ってもらえます。
専任媒介契約は売り主が自分で購入者を見つけられる可能性がある一方、不動産会社にも売却活動を行ってもらい、より良い条件の購入者を探したい場合に締結することが多い契約です。

(3)専属専任媒介契約

専属専任媒介契約では専任媒介契約と同様、売り主は契約会社以外の不動産会社と契約を結ぶことはできません。
専任媒介契約との特に大きな違いは、売り主が自分で購入者を見つけてきても、個人的に契約を結べないことです(「自己取引の禁止」といいます)。この場合、専属専任媒介契約を結んだ不動産会社を通して契約を行わなければなりません。自分で購入者を探した場合でも仲介手数料を支払うことになります。
このようにこの契約は売り主にとって制約が厳しく、契約した1社に全般的に任せることになります。そのため不動産会社に対する法的規制も、他の契約と比べ厳しく課されています。
例えばレインズへの登録義務が契約日から5日以内とされていること、売り主への業務報告が1週間に1度とされていることなどが挙げられます。
契約期間は3か月とされ売り主は期限到来後、同じ会社での契約更新も他の会社への変更も可能です。
専属専任媒介契約は不動産会社への規制が強く、売却活動も活発に行われるため、一般的に売却までの期間が他の契約と比べ早い傾向があります。

4.売却活動

媒介契約を結んだら、まず不動産会社がレインズに物件を登録し、購入希望者が物件情報を見られるようにします。
同時に会社が有している顧客リストに基づき、見込み客に物件を紹介します。
このようにして担当者が自ら購入者を見つけた場合、会社は売却主からも購入者からも仲介手数料を得ることができます。これを「両手仲介」と言います。
両手仲介では、不動産会社が売り主と購入者との間に立って仲介をしますので、完全に売り主側に立った契約交渉を進めてもらうことが難しいと言われています。
また不動産会社はインターネットやチラシ、コミュニティー誌などを使い、物件を広く周知させる活動を行います。自社のホームページにも掲載をします。
こうした活動により物件を実際に見たいという依頼が入ったら、内覧へと進みます。
または週末などを利用して、担当者に来てもらいオープンハウスを実施する場合もあります。
内覧の依頼が来た場合、日時を調整しますが、人気物件以外の場合はなるべく購入者の希望日に合わせる方が良いでしょう。
内覧は不動産会社の担当者の立ち会いのもとに行われます。
この時、内覧者が自分が契約をしている不動産会社の担当者を連れてくることもあります。
こうした場合、関係する不動産会社が1社増えることになります。
購入者が物件の購入について検討に入ったとき、条件などの交渉は売り主の不動産会社と、購入者の不動産会社が行うことになります。

もし売却活動の開始からしばらく経っても内覧希望者などが現れない場合、活動方針の見直しが必要となります。担当者と話し合い、戦略を立て直すことが大切です。
広告宣伝活動では情報を掲載する媒体の変更や、チラシの配布エリアの拡大などが考えられます。
他にも不動産会社のホームページ上に、「新着おすすめ物件」として目につきやすいように
掲載をしてもらったり、バナー広告などを出したり、といった方法があります。少し費用は掛かりますが、購入者の目に触れやすくなります。また不動産会社のおすすめ物件として掲載してもらえれば、購入希望者に安心感を与えることができます。

このような戦略を行ってもなお、内覧希望が入らない場合は最終的には「価格の見直し」を検討することになります。
最初は相場より少し値段を高く設定して販売活動を行いますので、タイミングを見て値下げを担当者と相談しましょう。売却活動を始めてから3か月経っても買い手が見つからない場合は、値段を下げる場合が一般的です。価格を下げたくない場合は、ちょうど契約が切れた時点で、依頼する不動産会社を変更するという選択肢もあります。

5.重要事項説明

内覧が成功し無事に購入者が決まったら、売買契約を取り交わします。その前に購入者に対し、不動産会社から物件の状態や周辺環境の状況、契約内容について改めて詳細な説明が行われます。これを重要事項説明を言います。
宅地建物取引業法35条で規定されており、売買契約の仲介をした不動産会社は必ず買い主に対して説明を行わなければなりません。
売り主に対しては説明義務はありませんが、購入者が説明を受けた後重要事項説明書に売り主・買い主双方が署名・捺印を行います。これは説明書に記載されている事項についてお互いに合意をしているという確認のためです。
そのため事前に不動産会社から重要事項説明書のコピーをもらって、内容をチェックしておきましょう。
不動産会社に伝えた物件の情報が正しく記載されているか、また聞いていた取引条件と異なることが記載されていないかを確認してください。
不明点や疑問点がありましたら、不動産会社に問い合わせましょう。

重要事項説明は、従来売買契約の当日に行われてきました。しかし最近は契約締結日の数日前に行われることが多くなっています。
なぜかと言えば、買い主は重要事項説明を受けて購入について再検討を行い、契約を取りやめることができます。そのため買い主が検討を行う時間を持てるよう契約日当日でなく、数日前に行われるようになってきました。
説明は不動産会社の宅地建物取引士(以下、宅建士)が行います。

重要事項説明書に記載される項目は主に次のようなものがあります。
(1)物件の内容
(2)権利関係
(3)物件に関わる法令・その他の制限事項
(4)取引条件
(5)その他の重要事項

(1)物件の内容

所在地、物件の範囲、間取り、構造、築年数、水道・電気等の設備、など
物件の状態は重要事項説明書にすべて記載されます。物件に不具合がある場合などは、修繕費用をどちらがどこまで負担するか、といったことも明記されます。
またマンションの場合は、私有部分と共有部分の範囲を明示します。

(2)権利関係

物件の登記に関わる事項
重要事項説明書には不動産の登記簿に記録されている、物件に係る権利者の氏名等が記載されています。
所有権名義人をはじめ、住宅ローンがある場合には抵当権も記載されています。売却代金でローンが返済され抵当権が抹消される予定であっても、重要事項説明書には明示されます。

(3)法令・その他の制限事項

不動産は多くの法令で規制がされています。一戸建ての場合は用地の利用などをはじめとした制限があります。マンションの場合は近隣の土地がどのような用地規制を受けているか、などの説明があります。

(4)取引条件

売買価格をはじめ、その他の金銭についても記載されます。
その他の金銭とは例えば「手付金」や「固定資産税等清算金」、「管理費等清算金」などがあります。

手付金
手付金は不動産の売買契約時に、買い主が売り主に対して支払うお金です。手付金額は売買金額のおよそ5~10%が一般的と言われています。
売買契約を結んだ後に購入者が契約を破棄したい場合、手付金を放棄すれば契約を解除することができます。逆に売り主の方が契約を破棄したい場合は、契約時に買い主から受け取った手付金の2倍にあたる金額を返還することになります。

固定資産税等精算金
固定資産税等の清算は売却年の固定資産税に関して、売り主と買い主が分担して負担をするものです。
固定資産税は年に1度、その年の1月1日時点で物件を所有していた人に課せられます。そのため年途中で売却した場合、引き渡しの前日までが売り主の負担に、引き渡し当日以降は買い主が負担することになります。買い主は売り主が事前に支払った固定資産税のうち、自己負担分を売り主に支払います。

管理費等清算金
これは売り主が前払いをしたマンションの管理費や修繕積立金を、買い主が売り主に支払うものです。管理費等は一般的に、月末などに次月分を支払うことになっています。そのため月の途中で物件を買い主に引き渡した場合、引き渡し日以降の分は購入者が負担しなければなりません。金額は日割計算となります。

取引条件として記載される内容は上記の他に、契約の解除に係る事項が記載されます。主に次のようなケースがあります。
①手付解除
②契約違反による解除
③ローン特約による解除
④危険負担による解除
⑤瑕疵担保責任に基づく解除

①手付解除
「手付金」の欄でご説明しましたが、売買契約当事者の都合で契約を解除したい場合、手付金の放棄、または倍返しを行うことで契約を自由に破棄することができます。ただし、相手側が契約の履行を始める前まで、という条件があります。契約の履行とは、例えば売り主が
登記の移転に向けた手続きを開始した場合、買い主が売買代金の一部支払った場合、などがあります。ただ具体的にどの行為が「契約の履行」とみなされるかについて、はっきりとした定めはないためトラブルになることも多いです。

②契約違反による解除
売り主、買い主のどちらかが契約を履行しなかった場合にあたります。
契約違反による解除の場合、違約金や損害賠償が発生しますので、「どういった場合が契約違反に当たるか」や、その場合の違約金額が重要事項説明書に記載されます。
一般的に契約違反とは、売買代金の支払い日を過ぎても購入者が代金を支払わない場合、逆に物件の引き渡し日を過ぎたのに売り主が引き渡さない場合、などが当てはまります。
金額は不動産売買代金の10~20%とされています。

③ローン特約による解除
契約を解除しても違約金等を支払わなくて良いケースもあります。
「ローン特約」が交わされている場合、購入者が金融機関のローンの審査に通らず、売買代金を払えない場合に契約を無償で解除ができます。「ローン特約」はあらかじめ重要事項説明書に記載することが一般的です。
ローン審査が不可の場合、購入者は契約を解除するにあたり違約金などのペナルティが課されず、さらに手付金も返還されます。

④危険負担による解除
契約から引き渡しまでの間に天災(地震・台風・水災など)で物件が滅失または毀損し、引き渡しが受けられなくなった場合に備えて結ぶ特約です。この特約を付けておくと上記の場合、買い主は無償で契約を解除することができます。
特約が重要事項説明書および売買契約書に記載されていない場合は、引き渡しを受けられなくても購入者は購入代金を支払わなければなりません。

⑤瑕疵担保責任に基づく解除 
瑕疵担保責任とは、売買契約を結んだ時点で購入者が知り得なかった物件の欠陥について、売り主が責任を負うという法律です。
「瑕疵」とは土地・家屋に存在する欠陥のことで、例えば設備の不具合や屋根が傾いている、床がゆがんでいる、などといったことが瑕疵とされます。
売買契約を結んだ時点で購入者が知ることができなかった「目に見えない欠陥」は、「隠れた瑕疵」とよばれます。これは買い主が注意を持って確認しても気が付かない、または知り得ない欠陥に限ります。注意して見れば容易にわかるものや、売り主から告知されていた欠陥は、隠れた瑕疵にあたりません。例えば戸建て住宅の場合、シロアリ被害や建物の重要な構造上の欠陥(木部の腐食)などが隠れた瑕疵とされます。
売買契約を結んだ後および物件の引き渡し後に隠れた瑕疵が発覚した場合、売り主はたとえその瑕疵について知らなかったとしても、責任を負わねばなりません。損害賠償や欠陥の補修、場合によっては契約の白紙解除が求められます。これを瑕疵担保責任といい、民法等で定められた善意無過失の買い主を守るための法律です。
売買契約の締結にあたり契約の解除条件として、瑕疵担保責任に基づく解除を規定することができます。
その場合は重要事項説明書にもその旨が記載されます。
瑕疵担保責任による契約解除を認める場合、(ア)瑕疵の範囲(対象) (イ)解除が認められる期間 (ウ)解除が認められる条件、などが明示されます。

(ア)瑕疵の範囲(対象)
マンションの場合は給排水管の故障や、雨漏りなどが瑕疵による解除の対象となります。その他、心理的に影響を与える事項(自己や自殺など)も瑕疵担保責任の範囲に含まれます。

(イ)解除が認められる期間
中古不動産の売買における瑕疵担保責任の期限は、特約により「物件の引き渡し時」から3~6か月とされるのが一般的です。売り主はこの期間内においてのみ、瑕疵担保責任を負います。買い主は瑕疵を発見した日から1年以内であれば、売り主に対し損害賠償または契約の解除などの権利を行使できます。
期限が過ぎた後に物件に瑕疵が見つかった場合は、売り主は責任を免れます。
民法では購入者が瑕疵を「発見」してから1年以内でしたら、売り主に対し損害賠償や契約の解除を求めることができるとされています。ただ民法の規定は任意規定となっており、期間や賠償の内容を当事者間で、特約により定めることができます。
瑕疵担保責任の期限が、瑕疵が「発覚」してから1年間の場合、売り主は長期間瑕疵担保責任を負い続けることになります。それを避けるために不動産の取引では「引き渡し」から3~6か月とされることが多くなっています。
しかし売り主が瑕疵の存在を知っていて故意に隠していた場合は、「悪意」と認められ、民法の規定に従い契約時の期限の特約は適用されません。

(ウ)解除が認められる条件
瑕疵が非常に重大なもので、補修を行っても到底住むことができない・引き渡しができる状態でない場合など、契約の目的が達せられないときは買い主は無条件で契約を解除できます。軽微な不具合や床・壁のゆがみなどの場合は解除は認められません。

なお重要事項説明書における瑕疵担保責任に関する規定は、解除条件の他、「瑕疵担保責任の履行に関する措置」が記載されます。
これは売り主が瑕疵担保責任の発生に備えて、保険会社などと保険契約を結んでいるか否か、について明記するものです。売り主が破産などにより瑕疵担保責任による損害賠償の支払いや欠陥の補修ができないときは、保険に加入していれば保険会社からその金銭が購入者に支払われます。これは売り主が善意の場合(瑕疵について知らなかった場合)に限ります。
物件の売買に際し売り主が保険に加入する場合は、重要事項説明書に保険機関の名称や保険期間、保険金額などを記載します。

(5)その他の重要事項

その他の重要事項は上記で説明したこと以外で、購入者に知らせておくべき重要な項目・事実が記載されています。
①物件の現状等に対する事項
物件や設備の不備・実状や、マンションの管理に関する事項があります。マンションの管理については管理の委託先、管理規約、管理費、修繕積立金などの規定が記入されます。
②物件周辺の情報
物件の価値や住人の生活に影響を及ぼすと思われる事項が記載されます。
例えば近隣に次のような施設がある場合に告知の対象となります。
・線路や工場があり騒音が予想される
・ごみ処理場や火葬場
その他心理的に影響を与える恐れのある事項も記載されます。暴力団事務所や近隣トラブルがある場合がこれに当たります。
その他の重要事項に記載されている内容は、ネガティブなものが多い場合、宅建士が説明しづらく口頭で詳しく説明してもらえないことがあります。そのためこの欄については書面に記載されていることを、しっかりと確認してください。気になることがあったら納得がいくまで質問をしましょう。

宅建士による重要事項説明を受け、購入者が書類に署名・捺印を行うと、重要事項説明書の内容を了承したものとされます。

6.売買契約の締結

売り主・買い主ともに売買条件に同意をしたら、売買契約の締結へと進みます。売買契約が締結されると、双方に契約の履行の義務が生じます。売り主は物件の引き渡しや登記移転の手続き、購入者は代金の支払いの義務を負うことになります。契約を書面にて記録することで、お互いの権利が守られます。
売買契約の締結日の流れは次のとおりです。
売り主・買い主・仲介不動産会社の担当者が顔合わせを行い、挨拶を交わすと売買契約書の読み合わせが行われます。こうして契約について両者同席の上で最終的な確認をします。
問題が無ければ双方が契約書に署名・捺印をし、収入印紙を添付すると契約が成立となります。
この後、購入者は売却主に対し手付金を支払います。現金や預金小切手を渡すか、口座振り込みを行います。
売り主は契約締結日に、不動産会社へ仲介手数料の半額を支払います。残額は物件の引き渡し後の支払いとなります。
売買契約書には、契約に関する重要事項や約束事がすべて記載されています。一旦契約を交わすと解除することが非常に難しく、多額の違約金も支払うこととなります。また契約成立後に、当初の約束と違う部分がある、というような訴えは認められません。そのため契約書の読み合わせの際には、内容をしっかりと確認するようにしましょう。

売買契約書のチェックポイント

売買契約書には取引当事者の氏名や、不動産を特定する範囲をはじめ多くの事項が記載されています。記載事項は宅地建物取引業法で規定されています。
売買契約書を確認するに当たり、特に注意したいポイントをご説明します。
まず次のことを意識しながら読み進めましょう。
・自分の希望した条件が反映されているか
・取引条件についてあいまいな点はないか
・引き渡しまでのスケジュールに無理はないか

具体的に最も注意したいことは次の5点です。
(1)物件の表示
(2)売買代金等
(3)解除条件
(4)瑕疵担保責任
(5)負担の削除

(1)物件の表示
マンション名・所在地・面積など、売買取引の対象となる物件について表示されます。登記簿に記載された内容と同一であるかを、確認をして下さい。
(2)売買代金等
売買価格・支払い方法・支払日などが記載されます。手付金以外の代金を一括で支払うのか、中間金など分割払いとなるのか、などが記載されます。一般的には物件の引き渡し日に合わせて残金を支払います。その他、消費税に関しても記載されます。
(3)解除条件
どういった条件のもとで契約が解除されるか、およびその場合の対応が記載されます。手付解除・契約違反による解除・ローン特約・危険負担による解除、などがあります。
また手付金の放棄・倍返しでの契約破棄について、解除ができる有効期限が記されます。
(4)瑕疵担保責任
瑕疵担保責任については「5.重要事項説明 (4) ⑤瑕疵担保責任に基づく解除」で詳細をご説明をしていますが、売買契約書の読み合わせにあたり、瑕疵担保責任に関する事項を再度チェックしましょう。
瑕疵担保責任の特約を付するか否か、また期間について確認をしましょう。さらに引き渡し後に物件に問題が生じた場合(隠れた瑕疵が発覚した場合)に、どのような対応を行うかについても契約書に記載されます。売り主による損害賠償や欠陥の補修、またはその両方を請求する権利を購入者は保持します。一般的に、補修を行っても住むことができないほど瑕疵が重大の場合のみ、購入者による契約の解除が認められます。
またマンションの場合は専有部分の瑕疵に限り、売り主は責任を負うこととなります。

(5)負担の削除
負担の削除とは、売買物件に抵当権や賃借権など第三者の権利が設定されている場合は、それを売り主がすべて抹消してから買い主に引き渡す、という約束を明記するものです。「負担」とは、買い主による所有権の行使を阻害する要因のことです。
売り主は物件の引き渡しまでにこれらの権利を削除する必要があります。
実際には引き渡し当日に司法書士が売り主・買い主の代理として、所有権移転登記および抵当権等の抹消を行います。

その他の書類

その他売買契約日に取り交わされる書類は次の物があります。
(1)物件周辺状況等報告書
(2)付帯設備表
(3)覚書・念書
(1)、(2)の書類は「告知書」とも呼ばれます。

(1)物件周辺状況等報告書
中古の不動産を売買するにあたり、売り主が記入して買い主に交付する書類で、対象物件について売り主にしか知りえない事実を明示する書類です。買い主が知っておくべき物件の状態や、周辺環境に関して記載されています。
マンションの場合は給水管・排水管の故障や設備の不具合、リフォームの実施履歴などを具体的に記します。故障や不具合に関してはできる限り過去までさかのぼって、どういう不具合だったのか、どのように対処をしたのかを詳しく記入します。その他、マンションにおける輪番制の役員の義務などがあるなら伝えておいた方が良いでしょう。
物件の状態以外でも、心理的に買い主の購入意欲に影響を与える事柄(事件・自殺など)も記載します。
また周辺環境等に関して、騒音や臭気の原因となるような施設やの存在や、近隣とのトラブル等も伝えなければなりません。
物件周辺状況等報告書は法的拘束力を持ち、記載された事柄は買い主が了承の上で購入したものとされます。そのため引き渡し後に、記載した設備や近隣のトラブルが発生しても、売り主は責任を免れます。一方都合の悪い事実を隠して売却し、引き渡し後に不具合等が発覚した場合は、売り主は瑕疵担保責任を負うこととなります。

(2)付帯設備表
付帯設備とは物件に付属している設備のことで、エアコンや床暖房、ガス給湯器など様々なものが含まれます。これらの設備について売り主が「置いていく=買い主に引き渡す」のか、「持っていく=撤去する」のかを書面に記入したものを、付帯設備表といいます。
この書類を買い主に交付することで、引き渡す設備についてお互いに確認を行い約束を明確にします。これにより物件の引き渡し後に、「エアコンは置いていくはずではなかったのか」などといった口約束によるトラブルを防ぐことができます。
また造作家具(物件に造り付けられた家具、オーダー家具ともいいます)についても記載をします。引渡し前に工事をして造作家具を持っていく場合、そのことも伝えなければなりません。
付帯設備表とは売り主が「記入時」に物件に付属している設備を書くのではなく、「引き渡し時」に物件に付属して残される設備について記入します。
付帯設備表には各設備に関して「有」・「無」の記載をする欄があり、売り主はその欄にチェックを入れていきます。
また付帯設備表では残していく設備について、不具合や故障があるか否かについても記載をします。売り主がわかる範囲で、買い主から見て気になるであろう不具合等をすべて告知をしなければなりません。故障などがある箇所については具体的に、「いつから」「どのような不具合か」「どうすれば使いやすくなるか」といったことも記載をします。
売買契約の締結後に、残していく設備に不具合や故障が発生したら、売り主は引き渡しまでにこれを補修する義務があります。
また引き渡し後7日以内に、付帯設備表に記されていない不具合・故障がみられた場合は、売り主の責任で修繕を行うことになります。

(3)覚書・念書
覚書や念書は、契約書の補助的な書類として作成されます。契約書には書ききれない重要事項・条件や、契約書に記載するほどではない事項が記載されます。話し合いで決定した約束事を書面に残し、後のトラブルを防ぐことが目的です。また契約締結後に条件などが変更になった場合、契約書を新たに作成する代わりに覚書を作成します。これらの書類は売り主・買い主双方の同意のもとに取り交わされます。
覚書と念書の大きな違いは、覚書はある事項に関して売り主と買い主が合意したことを記載する文書で、両者の署名・捺印が必要です。お互いに1通ずつ保管するために、2通作成されます。
念書は当事者の片方が相手方に対し、一方的に約束をして義務を負うものであり、約束をした当事者のみが署名・捺印を行います。
具体的にどのような事柄において覚書・念書が作成されるかをご説明します。

覚書
(ア)売買契約を結ぶ前に決まっていた事で、契約書に記載しなかった詳細事項など
・契約の解除に関する覚書
・固定資産税等の清算の覚書
(イ)手付金預かりの覚書(手付金〇〇円を確かに預かりました、という証拠の覚書)
(ウ)契約締結後の契約内容の変更・訂正
・引き渡し日
・代金の支払い期限・支払い方法
・住宅ローンの内容
覚書は内容によって契約書と同様の法的拘束力を有します。その場合は収入印紙を貼付することで効力が発生します。

念書
覚書に記載された内容は、売り主・買い主双方に義務が発生するのに対し、念書は署名・捺印をした人のみに義務が発生します。
例えば契約後に買い主が代金の支払いを延ばしてもらいたい場合、「〇月〇日までに支払います」という念書を作成して、署名・捺印を行い売り主に差し入れます。
また売り主が物件の引き渡しを延期してもらいたい場合は、「〇月〇日に引き渡します」という念書を作成し、買い主に交付します。
念書を受け取った側は記載の期限までに支払い・引き渡しがない場合は、この念書を裁判などの際に証拠にすることができます。
ただ念書は双方の署名・捺印がないため法的証拠としては若干弱く、重要な取り決めは覚書を取り交わした方が良いでしょう。

7.残金決済・引き渡し

事前手続き ~残金決済・引き渡し当日までにすること~

最初に売買契約を締結してから、残金決済・引き渡し日までに売り主が行っておくことの流れをご説明します。
契約書を結んだ後も、手付解除やローン特約による契約解除のおそれがあります。そのため解除の有効期限が過ぎるまで、および購入者のローン審査承諾の報告があるまでは、引き渡しに関する手続きは行わないようにしましょう。近隣の住人への挨拶や送別会なども、契約解除のおそれが低くなってからの方が良いでしょう。それまでは家の中を整理し、いらないものを片づけるなどに留めておきましょう。
手付解除の期限が過ぎ、買い主のローン審査が通った旨の知らせが来たら、本格的に引き渡しに向けて手続きを開始しましょう。
具体的には次のことが必要です。
(1)残金決済・引き渡しの日時・場所の調整
(2)登記の変更に係る手続き
(3)抵当権抹消手続きを金融機関に通知する
(4)引越し
(5)物件の立ち合い
(6)必要書類等の準備
(7)その他の手続き
(8)自己資金の用意(該当する場合のみ)

(1)残金決済・引き渡しの日時・場所の調整
一般的に売買契約を結んでから引き渡しまでの期間は1か月半~3か月程度と言われています。売り主・買い主・営業担当者で残金決済・引き渡しの日取りを調整して決めます。
残金決済は売却代金の受け渡しの手続きがあるため、金融機関を利用できる平日に行われます。
引き渡しまでに売り主が行うことは登記変更や抵当権抹消の手続きの準備、引越しなど数多くありますので、無理のないスケジュールを組むようにしましょう。
万一決めた引き渡し期日に間に合わない場合、違約金を支払うことになります。違約金の相場は売却価格の10~20%となっています。
残金決済を行う場所は通常購入者が指定します。一般的には購入者がローンを申し込んでいる場合、融資を行う銀行の個室を借りて行われます。

(2)登記の変更に係る手続き
残金決済・引き渡しの期日が決まったら、所有権移転の準備をしましょう。登記の手続きは司法書士に依頼します。
司法書士は仲介の不動産会社が提携している書士の場合もありますし、購入者がローンを利用する銀行が紹介する司法書士に依頼する場合もあります。ただし売り主が自分で決めた司法書士を利用することもできます。
実際の所有権移転の手続きは、残金決済の当日に司法書士が売り主・買い主の代理として、法務局で行うことが一般的です。決済日に売り主は購入者から残りの売却代金を受け取り、物件に住宅ローンの抵当権が設定されている場合は、その資金で抵当権を抹消します。その後所有権移転の手続きが行われ、物件の所有権が購入者に移ることとなります。
そのため残金決済日の前に、所有権移転の手続きを司法書士に依頼しておきます。

(3)抵当権抹消手続きを金融機関に通知する
売却する物件に住宅ローン等の抵当権が設定されている場合、引き渡しの前に抵当権を抹消する必要があります。このため残金決済の日取りが決まったら、ローンを借りている金融機関に報告をし、決済日にローンを全額返済する旨を伝えます。金融機関は決済日までの利息や繰上返済手数料などを計算し、返済金額を算定する必要がありますので、なるべく早めに伝えるようにしましょう。

(4)引越し
引き渡し日が決まったら引越し業者と日取りを調整し、本契約を結びましょう。物件の売買契約締結後に少しずつ家の整理を始めて、あらかじめ数社に査定をしてもらうとスムーズに引越しの準備ができます。
3月や9月の繁忙期に重なる場合は、なるべく早めに引越し業者に連絡をしましょう。
引越し当日は置いていくもの、持っていくものを確認しながら作業を進めると間違いが起こりづらいです。

(5)物件の立ち合い
引越しが済んだら売り主・買い主・営業担当者の三者立ち合いのもとに、物件の最終確認を行います。これは物件や設備の状態が契約書通りか否かについて、引き渡し前に双方が一緒に確認を行うものです。主に付帯設備表の事項についてチェックをします。
設備表に記載されている設備がすべてあるか、撤去されるはずの物が置いたままになっていないか、を中心に見ていきます。置いていく約束のエアコンはあるか、タンスや照明器具など余計な残置物は無いか、1つ1つ設備表と照らし合わせましょう。
また設備表で告知されていること以外の、設備の故障・不具合についても入念に確認をしましょう。
その他家具等がすべてなくなった状態での、物件の状況をよく見ていきましょう。家具の後ろに隠れていた壁に腐食はないか、床に穴などは開いてないか、などをチェックすることが大切です。
こうして両者立ち会いのもとに確認を行うことで、引き渡し後に「契約内容と違う」「物件や設備の状態が悪い」、などといったトラブルの発生を防ぐことができます。

(6)必要書類等の準備
残金決済・引き渡しの当日に必要な書類を準備しておきます。ありがちなのが引越しの荷物に紛れて、どの段ボールにどの書類が入っているかわからなくなってしまうことです。決済日に持参する書類等は別の場所にまとめて保管しておくと良いでしょう。
残金決済当日に必要な書類等は主に次のとおりです。

登記関係
①登記識別情報または登記済証(権利証)原本
②印鑑証明書原本
③住民票
④本人確認書原本(身分証明書)
⑤司法書士への委任状(司法書士に登記を依頼する場合)
⑥実印

購入者に引き渡す書類一式(物件資料など)
⑦物件室内・室外(共有部分)の設備取扱説明書
⑧マンション購入時のパンフレット(あれば)
⑨マンション管理規約・管理組合関係の資料
⑩鍵一式(郵便受けや宅配ボックスの暗証番号など)

その他
⑪銀行口座の通帳(ローンを返済する場合)および届出印

残金決済・引き渡し時の必要書類については「マンション売却手続きに必要な書類一式」で詳しくご説明していますので、そちらをご覧ください。
また必要書類は不動産会社により異なります。必ず事前に不動産会社に確認をしましょう。

(7)その他の手続き
①マンション管理組合への通知
マンションに居住する人は管理組合の組合員となります。マンションを売却して所有権を失ったら「組合員資格喪失届出書」を提出しなければなりません。
組合員資格喪失届出書は原則として管理組合の理事長宛てに出しますが、実際にはマンションを管理する管理事務所に提出をします。
届出書を提出しないと、管理費や修繕積立金の口座引き落としが引き渡し後も続いてしまいます。
提出のタイミングは残金決済が終わり所有権が購入者に移った直後ですが、残金決済の前に早めに管理組合に売却の旨を伝えておくと良いでしょう。
早め伝えておく理由は、組合員資格喪失届出書の他にも、駐車場などを利用していた場合は契約を解除する書類が必要です。そのため管理組合に事前に必要な提出書類を聞いておくと手続きがスムーズになります。
また管理費や修繕積立金の滞納が無いかについても組合に確認をし、支払い状況を記載した書類をもらえるようでしたら発行をお願いしましょう。

②電気・ガス・水道会社への連絡
旧住所での「使用停止手続き」と新居での「利用開始手続き」が必要となります。ホームページ上でオンライン手続きができる会社もあります。ガスの場合は停止時と開始時にガス会社の訪問が必要ですので、転居日が決まったら1週間前までには各会社に連絡をしましょう。

③郵便局への転送届
郵便局に転居届を提出する際は①本人確認書類 ②旧住所が確認できる公的書類、が必要です。

(8)自己資金の用意
売却物件に住宅ローン等が組まれており、ローン残債の支払いに売却資金のみでは不足する場合、抵当権抹消のために不足分の自己資金を用意します。
当日現金を持参する場合や、普通預金通帳から振り込む場合は問題はありません。しかし自己資金を有価証券や保険、定期預金、投資信託などから支払う場合は、期日に注意しましょう。金融商品の場合、解約手続きから現金化まで数営業日かかることもあります。
決済日当日までに現金化ができないと抵当権を抹消できず、引き渡しが延期になることから違約金を支払うことになります。早めに金融機関に解約の旨を伝えておきましょう。
住宅ローンの支払い以外では決済日当日に支払う費用として、不動産会社への仲介手数料の残額、司法書士に支払う報酬、登記手続き費用などがあります。
売却代金で支払える場合は用意しないでも大丈夫です。

h3 残金決済・引き渡し当日の手続きの流れ
残金決済・引き渡し手続き当日は、売り主・買い主・不動産会社の営業担当者・司法書士が立ち会います。場所は買い主が指定しますが、多くの場合は買い主がローンを利用する金融機関の個室で行われます。
残金決済後に司法書士は当日中に法務局を訪れ、所有権移転登記などの代理申請をする必要がありますので、決済手続きは一般的に午前中に取り行われます。
司法書士や営業担当者の案内に従って手続きを進めていきますが、基本的な流れを知ってイメージしておくと、安心して当日に望めるでしょう。当日は通常次のような流れで手続きが行われます。なお場合によりますが、最初に購入者が金融機関からの求めで、融資関係の手続きを行うこともあります。

(1)司法書士による関係書類の確認
(2)登記手続きの準備
(3)売買代金の受け渡し
(4)税金などの清算
(5)関係書類の作成
(6)着金の確認
(7)仲介手数料の支払い
(8)鍵・マンション関係書類の引き渡し
(9)売り主のローンの返済

(1)司法書士による関係書類の確認
司法書士はまず初めに、売り主が本人であるかの確認をします。売り主は本人確認書類を持参しましょう。運転免許証などでも大丈夫ですが、できれば印鑑登録証明書や住民票を用意しておくと良いでしょう。本人確認は売り主と司法書士が顔なじみであっても、必ず行わなければなりません。
その後、登記手続きに係る書類を司法書士が確認します。売り主側の書類は登記済証または登記識別情報通知書、印鑑証明書、司法書士への委任状などがあります。

(2)登記手続きの準備
司法書士による売り主の本人確認および書類の確認が済んだら、所有権移転等の登記手続きに入ります。他にも抵当権抹消登記・住所変更登記などの手続きがあります。各申請書の内容を売り主・買い主が確認した後、署名・押印を行います。
一般的には司法書士が代理で法務省にて申請手続きを行いますので、司法書士への委任状もあわせて作成されます。押印は売り主は実印を用いるように定められています。捨印も押しておきましょう。
司法書士が代理申請をする際は、売り主から登記済権利証を預かりますので、必ず「預かり証」を渡してもらいましょう。

(3)売買代金の受け渡し
登記手続き等の書類の記入が済んだら、売買代金の受領手続きを行います。代金の受け渡し方法は現金の手渡し、あるいは売り主の銀行口座への振り込みとなります。
この時受け取る代金は次のものがあります。
①売買代金の残額
②固定資産税と都市計画税の清算金(日割清算金)
③管理費等・修繕費の精算金(日割清算金)
②、③ の清算は、購入者のローン実行手続きの待ち時間に行われることもあります。

代金等受け渡し手続きの流れは、まず購入者が(ア)払い出し伝票 (イ)売り主の銀行口座への振り込み伝票、を作成します。代金を現金で持参している場合は振込伝票のみになります。
司法書士が各種伝票と購入者の本人確認書類、登記書類の確認を終えると、銀行の融資担当者へ報告し融資の実行が行われます。
融資の手続きが完了し、買い主の口座から売り主の銀行口座に資金が振り込まれるまで、30分~1時間ほどかかります。その間に売り主・買い主は以下の手続きを行います。

(4)税金などの清算
売買代金と一緒に固定資産税・都市計画税の清算金の受け渡しを行っていない場合、この時間を利用して清算をします。
都市計画税とは都市計画法で定められた「市街化区域」内に、土地や家屋を所有する者に課せられる地方税です。市街化区域とは現在既に市街地となっている区域、または将来市街地化を進めていく予定の地域のことです。
都市計画税は市街化区域内の上下水道等のインフラ設備や、公園などの整備等、街づくりの資金に当てられます。その年の1月1日時点に区域内に土地や家屋を所有する人が支払う税金です。
またマンションの管理費・修繕積立金の清算についても、同様に融資実行の待ち時間に行います。
いずれも日割り計算で清算金が算出されます。売り主が前払いした税・管理費などについて、引き渡しの前日分までを売り主が負担し、引き渡し当日以降の分を買い主が負担します。買い主は自己の負担分を売り主に渡します。

(5)関係書類の作成
税金等の清算金の授受が終わりましたら、不動産会社が用意した各種書類の作成手続きを行います。
ここで作成される書類は次のものがあります。
売り主が署名・押印を行う書類
・売買代金領収書
・固定資産税等清算金などの領収書

売り主・購入者、双方が署名・押印を行う書類
・引渡完了確認書…物件の引き渡しが完了したことを、両者が確認した旨を記載します。
・区分所有者変更届…マンションの管理組合に提出する書類です。

購入者のみが署名・押印を行う書類
・管理費等引落伝票

(6)着金の確認
金融機関による融資の実行が完了し、売り主への売買代金の振込が行われたら、売り主は指定した口座に確かに代金が支払われたかの確認をします。
確認方法は、①最寄りにその銀行のATMがあれば通帳を記帳 ②銀行への電話確認(事前に通知が必要) ③スマホやPCなどでネットバンキングを利用してのオンライン確認 などがあります。
売却代金が確かに口座に支払われたら、作成した領収書などを購入者に渡します。

(7)仲介手数料の支払い
売買代金の受け渡しの確認が取れたら、取引が無事に終了したことになります。仲介をした不動産会社への仲介手数料を支払います。
売買契約時に手数料の半額を支払っていますので、残額を一括で支払います。またこの時、司法書士への報酬もあわせて支払います。

(8)鍵・マンション関係書類の引き渡し
最後に物件の鍵一式および関係書類を売り主から買い主に渡します。鍵一式には郵便受けや宅配ボックスの暗証番号なども含まれます。
マンション関係書類は設備取扱説明書、管理規約・管理組合関係の資料、物件購入時のパンフレットなどがあります。

(9)売り主のローンの返済
鍵やマンション関係書類の引き渡しが済んだら、残金決済・引き渡しの手続きがすべて終わり、解散となります。
ただ物件に売り主の住宅ローンが組まれている場合、ローンを一括返済して抵当権を抹消しなければなりません。抵当権の抹消手続きには金融機関が発行する抵当権の「解除証明書」が必要です。そのため残金決済・引き渡し手続きが終了したら、当日中にローンを借りている銀行へ、解除証明書類を取りに行く場合があります。
ただし多くの場合は司法書士が代理で銀行から受け取り、登記所で抹消手続き等を行いますので、売り主が直接銀行へ行くケースは少ないです。

h2 8.行政手続き(税務申告)
h3 譲渡所得税とは?
残金決済・引き渡しを終えた後、売り主が行うことは税金関連の手続きがあります。物件の売却により利益が生じた場合、「譲渡所得税」を納める必要があります。譲渡所得税は様々な資産の売却利益に課せられる税の総称で、所得税と住民税から構成されます。
これに加えて「復興特別所得税」として2013年から25年間、基準所得税額の2.1%が所得税部分に加算されます。基準所得税額とは、所得税額から様々な控除を差し引いた後の金額です。
復興特別所得税は、東日本大震災の復興施策の財源に充てるために創設された税金です。所得税を納める個人は、復興特別所得税もあわせて納付する義務を負います。
譲渡所得税は不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日までに、他の所得と一緒に確定申告で納付します。
不動産の売却により利益が生じなかった場合や損失が出てしまった場合は、譲渡所得税を支払う必要はありません。税務署から譲渡所得税の申告の案内が送られてきますので、その書類に利益が出なかった旨と、その算出根拠を記載して返信を行うと、納付は不要とされます。

譲渡所得税はその他の所得(事業所得・給与所得)とは分離して算出されます。その他の所得で損失があっても、不動産売却益と合算して相殺することは認められません。あくまで不動産売却の利益に対して課税されます。これを分離課税といいます。

h3 譲渡所得税の算出方法
譲渡所得税額の算出方法は以下のとおりです。まず譲渡所得金額を求め、その額に税率をかけて求めます。

①譲渡所得金額=②譲渡価額 -(③取得費+④譲渡費用)- ⑤特別控除額(*一定の条件あり)
譲渡所得税額=①譲渡所得金額×税率(所得税・住民税)

用語のご説明をしましょう。
①譲渡所得金額
売却価格から購入価格や様々な費用・控除額を差し引いた後の、課税対象となる部分です。

②譲渡価額
売却価格および固定資産税・都市計画税の精算金の合計額です。

③取得費
物件を購入した時の価格と、購入にかかった諸費用の合計額です。
なお建物の場合は購入価格を算出する際に「減価償却費」を差し引く必要があります。
では減価償却費とは、どういう費用でしょうか。
建物は使用に伴い年月を経るに従って、劣化していく(=価値が減少する)と考えられています。この価値の減少分を費用として捉えたものが減価償却費です。
取得費の算出式は次の2種類があります。

(ア)取得費=購入価格+購入時の諸費用-減価償却費
購入時の諸費用は仲介手数料、税金(不動産取得税・印紙代・登記費用)、リフォーム・改良費などが含まれます。

(イ)譲渡価額×5%
取得費が分からない場合はこの計算式で求めた額を取得費として、譲渡所得金額を算出します。

なお両方の式で算出した額を比較して、大きい方の金額を取得費として採用します。

④譲渡費用
売却の際にかかった費用です。仲介手数料、税金(印紙代・登記費用)などが含まれます。譲渡費用は売却手続きのためにかかった直接の費用となりますので、次のような費用は対象となりません。
・物件の価値の維持や管理費用(居住時のリフォーム費、固定資産税など)
・購入者が期限までに売却代金を支払わなかった場合の取立て費用

⑤特別控除額…特例により一定の条件のもとで、控除額を譲渡所得から差し引くことができます。特別控除につきましては複数ありますので、後程ほど詳しくご説明します。

h3 税率について ~所有期間により税率が変わる~
譲渡所得税の税率は物件の所有年数により異なります。所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」、5年を超える場合は「長期譲渡所得」となります。長期譲渡所得の方が税率が低く、短期の場合の約半分程度です。
所有期間を計算する上で注意が必要なのは、所有期間とは物件の購入日から譲渡日(引渡し日)までの期間ではないということです。
譲渡所得税における所有期間は、譲渡した年の1月1日を基準とし、その時点で購入日から5年以内の場合は短期譲渡所得、5年を超えている場合は長期譲渡所得になります。
なお購入日・譲渡日は原則的に物件の引き渡しが行われた日になりますが、それに代えて売買契約締結日を購入日・譲渡日して計算することも可能です。

所有期間の計算はとても大切です。本来は長期譲渡所得に該当するものを、間違えて短期譲渡所得の税率で計算してしまうと、確定申告の際に必要以上に多額の税金を納付することになります。

居住用不動産の譲渡所得税率は次のとおりです。

短期譲渡所得の場合 39.63% (所得税 30.63% 住民税 9%)
長期譲渡所得の場合 20.315% (所得税 15.315% 住民税 5%)

内訳は以下のとおりです。
短期譲渡所得 所得税 30% 住民税 9%
長期譲渡所得 所得税 15% 住民税 5%

さらに所得税に以下の復興特別所得税率(2.1%)が加算されます。
短期譲渡所得 30%×2.1%=0.63%
長期譲渡所得 15%×2.1%=0.315%

h3 特例により控除・軽減税率が受けられる
一定の条件に当てはまる場合、特例により譲渡所得金額からの控除や、軽減税率が適用されます。代表的なものは次の2つがあります。
(1) 居住用財産(マイホーム)の特別控除
別名を「3,000万円の特別控除」と言います。投資用のマンションなどではなく、売り主本人が居住していた持ち家(マイホーム)を売却した場合、譲渡所得から3,000万円を控除として差し引くことができます。この特別控除を受けるには主に以下の条件があります。

①売却年の前年・前々年に同じ控除、または譲渡所得税に関する別の税の軽減措置等を受けていないこと。ただし後述する(2)「10年超所有軽減税率の特例」の適用は条件から除かれ、2年以内にこの軽減税率の特例を受けていても、3,000万円の特別控除を受けることができます。

②物件の売却先(譲渡の相手)が、家族や生計を共にする親族、内縁関係にある者以外であること。

③買換えの場合は新居について住宅ローン控除を受けていないことが条件。3,000万円の特別控除と住宅ローン控除の併用は認められていません。

この居住用財産の特別控除は、次にご説明する「10年超所有軽減税率」との併用が可能です。
なお譲渡所得が3,000万円より少ない場合は、譲渡所得金額全額が控除されます。つまり所得がゼロとみなされ、譲渡所得税の支払い義務はありません。

(2) 10年超所有軽減税率の特例
所有期間が10年を超える持ち家を売却して利益が出た場合に、適用される特例措置です。譲渡所得から上記「3,000万円の特別控除」を差し引いてもなお売却益が残る場合、一定の金額までは通常の長期譲渡所得税率よりも低い税率が適用されます。
この特例では、譲渡所得税の税率は次のように定められています。

譲渡所得金額から3,000万円の控除を差し引いた額のうち、6,000万円以下の部分には軽減税率が適用され、6,000万円を超える部分に対しては通常の長期譲渡所得の税率が適用されます。
① 6,000万円以下の部分の税率   14.21% (所得税 10.21% 住民税 4%)
② 6,000万円を超える部分の税率 20.315% (所得税 15.315% 住民税 5%)
*所得税には復興特別所得税が加算されています。

10年超所有軽減税率の特例を受ける条件は、所有期間以外は(1)居住用財産(マイホーム)の特別控除の適用条件と同じです。
なお、この場合も所有期間の算出方法に注意しましょう。売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えている場合に適用されます。

その他、譲渡を行い売却損が発生した場合、給与所得や事業所得などの他の所得と損益通算ができる、という特例があります。損益通算とは、事業や投資で損失が出た場合、その損失分を他の利益額から控除して、全体の課税所得額を低くするものです。不動産の売却益は分離課税ですが、損失が出た場合は他の所得と相殺することができます。ただしこの特例は2019年12月31日までに譲渡した場合に限られます。

h3 控除・軽減税率等を受けるための手続きは?
譲渡所得税は売却した翌年の2月16日から3月15日までに、他の所得と一緒に確定申告をして納付します。
譲渡所得税の控除・軽減税率等の適用を受けるには、確定申告時に所定の書類を提出する必要があります。
(1) 居住用財産(マイホーム)の特別控除を受ける場合
・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]

(2) 10年超所有軽減税率の特例を受ける場合
・譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
・売却物件の登記事項証明書

譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]は、国税庁の「確定申告書付表等」のページからダウンロードができます。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/yoshiki/01/fuhyo/03.htm

その他、売買契約日の前日時点で売却物件(マイホーム)の所在地と、売り主の住民票記載の住所とが異なる場合は、次の追加の書類が必要です。
・戸籍の附票の写し
・消除された戸籍の附票の写し
*戸籍の附票とは本籍地の市町村役場が作成するもので、住所履歴が記載されている書類です。本籍地の役所で取得することができます。

これらの書類がない場合は、売り主がその物件に居住していたことを証明する書類を提出します。

h2 まとめ
マンションを売却しようと決めてから、売買契約・物件の引き渡し、その後の税務申告まで全体的な手続きの流れをご説明しました。
売却活動のどのタイミングで何をする必要があるのか、どんなことを理解しておけば良いのか、おおまかですがイメージをつかんでおくと、戸惑わずに有利な売却活動を進められます。基本的には不動産会社の担当者が手続きについて案内をしてくれますが、ご自分で手続きのポイントを把握しておくことは重要です。知識を身につけて、ぜひ売却活動を成功させて下さい。